今回は、今年2月25日に海上自衛隊の阪神基地隊にて特別公開された、潜水艦「SS-504 けんりゅう」の乗艦見学記をご紹介します。
潜水艦への乗艦は一般には募集されていないため、今回は自衛隊奈良地方協力隊の企画による特別見学会に参加する形で望みが叶いました。
奈良地本と私との繋がりは、もともとは「防衛モニターを請け負っている妻の家族枠」から始まりましたが、広報用の作品貸与をきっかけに「地本協力者」という身分をいただき、晴れての潜水艦見学となりました。(これは、阪神高速上のバス車窓から見えた「けんりゅう」です)
【奈良地本への作品貸与の記事へのリンク】
出発地の奈良市内から、阪神基地までは有料道路と高速利用でおよそ1時間強です。当日はあいにくの雨模様でしたが、中止になるほどの大雨でなかったのは幸いでした。
基地内に入り、岸壁に係留された「SS-504 けんりゅう」との対面です。「けんりゅう」は「そうりゅう型潜水艦」の4番艦で2012年、川崎造船神戸工場にて竣工。従来のディーゼル機関に加えてスターリング機関によるAIPシステムを搭載している点が特徴で、呉基地の第1潜水隊群第3潜水隊に所属しています。
見学時間が巡ってきたところで、桟橋を渡って甲板にアクセスします。見学にあたってはカメラやスマートフォンなどは(省秘保護の観点から)いったん預ける必要があり、残念ながら艦内写真などは撮影できませんでした。
ですので、ここからはテキスト情報のみになりますが、少しでも内部のイメージをお楽しみいただけましたらと思います。当日は雨ということで、ハッチの上にはテントが張られていましたが、ハシゴに向かうにはそのテントを避けなくてはならず、かなり斜めになったところを通らなくてはいけないため、なかなかスリリングでした。
垂直ハシゴを2層分降りると、そこには科員食堂と厨房がありました。14~15人ほどが同時に着席できるようになっていますが、座席の幅が非常に狭いため、乗組員は基本的に左手を使わず、右手のみで食事をとるしきたりがあるそうです。(←そのクセが抜けず、帰宅したときには奥様から「だらしない食べ方」と非難を受けるというエピソードも聞けました)
座席の下は食材の格納スペースになっており、食事の提供は一日4回(←交代時間の関係で一人が4回食べるわけではない)、金曜日のメニューはもちろんカレーとのことです。なお、厨房担当者は2名で、約40名分の食事を賄うとのことでした。
続いて艦首に進み(潜水艦映画でお馴染みの)円形の水密扉を複数潜って発射管室に到着。レイアウトは、中央の通路を挟んで左右両側に魚雷とミサイルが並び、先端に発射管扉という具合です。魚雷の下も寝台になっており、乗組員の居住スペースが確保されていました。(寝台は実際に見学者が寝転がることもできるようになっており、何名かの見学者が実際に寝心地を体験しておられました)
天井には魚雷搬入用のハッチが用意されており、中央の通路を(エレベーターの様に)上げ下げしつつ魚雷の搬入を行うとのことでした。また、発射管室は生活面では(運動不足解消のため)筋トレの場としても良く活用されるそうで、その他の娯楽では、ニンテンドースイッチのようなゲームやDVDなどの映像作品も人気があるそうです。
続いてはラッタルを一層上がって(潜水艦にとっての艦橋にあたる)発令所を見学。ここは潜望鏡をはじめ、液晶モニターが多数並んでおり「沈黙の艦隊」などの映像作品でお馴染みの光景が広がっていました。(潜望鏡は実際に覗かせて頂き、その鮮明な見え方にはたいへん驚かされました) また、床面にはゴムのクッション材が敷かれており、防音への対策なども確認できました。
次は後方に移動して士官室を見学。ここは固定式の長机とソファが備わっており、長机は緊急時には手術台として使用される旨の説明を受けました。小銃などの保管庫は厳重に管理され、万が一許可なしに開けた時には警報が鳴る仕掛けとなっているそうです。
艦内見学はおよそ1時間程度でしたが、興奮と感激の連続で、本当にあっという間に終わってしまいました。当日は入隊希望者向けの説明もあり、潜水艦勤務なら20代の尉官で年収800万円程度も可能ということで、夢のあるお話も聞けました。
潜水艦の艦内と聞くと「狭くて怖そう」というイメージがあったのですが、実際にはとても安心感があり、落ち着く空間でした。
【外界から離れてひとつの事に集中したい】タイプの方には向いた職場かもしれませんので、ぜひ多くの若者に興味を持っていただければと思います。