「艦船模型スペシャル No76」連載記事作例
2020年5月15日発売のモデルアート社出版「艦船模型スペシャル No76」の連載記事への掲載作例、1/700港湾ジオラマ「1930年代の横浜港」の紹介です。
本号の特集は「演出して魅せる艦船模型ジオラマの世界」ということで、連載記事の「港湾ジオラマの世界へようこそ!」でも、これまでで最も力を入れた港湾ジオラマ「1930年代の横浜港」を掲載しました。
この港湾ジオラマ「1930年代の横浜港」は、2017年の「第28回 ピットロードコンテスト」に応募して金賞を受賞した作品で、タイトル通り1930年代頃の横浜港「新港埠頭」の情景を再現したものです。
作品の全景はこのようになっています。現在では海上保安庁の拠点となっている、第三~第四突堤を切り取った情景とし(ベースサイズに収めるために)地形には若干のアレンジを加えています。
旅客列車が乗り入れる「4号上屋」など、港湾施設のほとんどはプラ板などでスクラッチしました。第四突堤には日本郵船「氷川丸」(ハセガワ)を接岸させていますが、実際に運用されていたのは「浅間丸級」ですので、これはあくまでフィクション設定になります。
第三突堤に接岸しているのは、大阪商船「ぶゑのすあいれす丸」(ピットロード「りおでじやねろ丸」改造)。ここも実際には貨物埠頭だったようなので、旅客船が接岸することはあまりなかったと思われます。
ジオラマ特集号だけに、工程写真も豊富に掲載
製作のきっかけとなったのは、1枚の彩色絵葉書との出会いです。小さいながらも船旅へのロマンを掻き立てるこの写真が、モチベーションを大いに高めてくれました。
横浜港駅と旅客ターミナルが入っていた「4号上屋」は、数少ない写真を参考に自身で図面を引き、プラ板でスクラッチしました。「WELCOME TO JAPAN」の表記は戦後に追加された可能性が高いですが、サンコーマークのアルファベットデカールで再現しています。
現在も横浜港で保管展示されている「横浜港駅(よこはまみなとえき)」の旅客ホームも、プラ材でスクラッチしました。階段部分は薄板を積層して自作しています。
自動車はトミーテックのプラキットや海外製のレジンキットを併用しています。ボディカラーなどは車好きの本領(?)を発揮し、多彩な資料をあたって説得力のある組み合わせを探りました。
完成後は見えなくなる部分ですが、建物の内部や間取りなども部分的に再現しました。線路や鉄道車両も配置し、古き良き港の活動美が演出できたと思います。
もちろん、港湾施設だけでなく「氷川丸」などの船舶の製作やディテールアップについても解説しています。
このジオラマは、30代最後の作品になることが決まっていたので、自分自身でも驚くほどの情熱を盛り込みました。
ピットロードコンテストは初参加だったのですが、思いがけず金賞を受賞させていただき、自身のキャリアの中でも、記念すべき一作となりました。